記憶喪失
今読んでいるのは南杏子さんの「アルツ村」
タイトル見ただけでどんよりしそうな自分を鼓舞して(ならなんで買った?という
声は聞き流して・・)読んでいますが、同氏は吉永小百合さんの「終の停車場」という
なんともかったるい映画の原作者です。私は映画を見てびっくりしました。
それまでに何冊か同氏の原作を読んでいましたので、これが吉永小百合さんの主演に
なるとこうなるか・・と思ったらなんだか南さんが気の毒になりました。
ま、これは私の一方的感想ですから、当人は案外喜んでいる・・のかもしれませんが。
そんな私の琴線を無謀にも引きちぎった男がいます。
はい。聡明な読者さんならお察しの通り・・「家人」です。
今我が家では「糖質制限ジャー」に嵌まっており(はい・・なんにでも嵌まる家なのです)
ほぼ毎日それでごはん一合炊いています。あんがいふっくら炊けて美味しいので、
続いています。
糖質カット炊きのときは水分量が変わって、米もステンレスの網のようなものに
揚げて蒸すように炊くのです。当然そのようにセットしなければないりません。
先日、この飯がなかなか炊き上がりません。通常45分のところ一時間たっても出来上がらない
のです。これはなにかおかしいと感じて蓋を開けようとすると
「ちょっと待って。早まらないで」と止める家人。開けようとする私。止める家人。
これが何往復かして一時間超えて開けてみると、ごはんはべちゃぺちゃお粥状態。
なぜ?????
こうなるとしっこく原因を突き止めようとするのが家人の感じ悪い性癖です。
そして彼が行きついたところは「糖質カットにセットしないで炊いたからこう
なったのだ。いつもメニュー見ないからそうなる。」と言い切るのです。
「いいえ。毎日それで炊いてるので間違いない」と言い張る私。
「普段そうでも、指がちょっと触れて隣にセットされることはあるでしょ。」と
小さな声でぐちぐち言うくせに、決して引き下がらない家人。
お箸を持つ私の手が怒りで震えはじめるのを見ると、これはまずいと思ったか
そこで話題は切れました。
あとで思えばこれは停戦ではなく休戦だったのです。
家人ロシアの黒い罠だったのです。
翌日、朝ごはんの支度に意気揚々とコーヒーメーカーのセットを
していてふと隣を見ると、糖質制限炊飯器の上に黄色のテープに黒々と印字
された「注意」の文字と矢印。その方向はメニューの中の「糖質カット炊き」と
書かれてあるところです。
そして私の目の前にはコーヒーメーカーの前に貼られた「紙・注意」の赤いラベル。
私の怒りは燃え上がりました。
先日はコーヒーのペーパーフィルターを忘れてお湯が溢れだし(これ二回目です)
散々嫌味言われて「注意」と貼られて、そして今日は炊飯器にです。
みた途端、私の中で今読んでいる「アルツ村」が沸騰してきました。
病気を抑えるためにあちこちにメモを貼り付けて生活している人たち。
・・・いやいや決してこの病気の人たちを揶揄している訳ではありませんよ。
ただ、口ではどうしても勝てないので、こういう暴挙に出た家人の振舞が許せないのです。
「そんなこと言ってないじゃん。ただ、ケアレスミスなんだから、注意したほうが
いいかなって思っただけよ。」と言い訳並べる家人。
「口で言えばわかるわよ。こうやって人のアラを指摘するのは陰湿。あなたの
性格、そ・の・も・の・ね」
もう止まらなくなりました。
「だいたいね。なによこれ。人が忘れたことこうして指摘して何が面白いのよ。何
優越感持ってるのよ。忘れる回数と内容比べたら、あなたの方が何倍多いかわかってんの?
毎日家の鍵さがしてバックひっくり返して、昨日は銀行行くのに通帳わすれて
一旦行ったら違うとこの持ってたでしょ。そんな人が私のこと笑えるの?」
「いや、そんなことは思ってないよ。君の方が記憶力はすばらしいことはよーく
判ってます。ただケアレスミスは多い。だからね・・」
「何上から目線なのよ。目くそ鼻くそならまだ許せるけど、自分のミスを
棚に上げてのその態度、なにさまよっ。あなたが私のミス笑えるの?
ふん・・10年早いわっ。」
「いや、10年たったら、きっとボクのほうが・・」と口ごもる家人のそれがまた腹立たしい
のです。
いやはや、最近は記憶が喧嘩の種になることは多いです。
「君みたいに記憶力のいい人が認知症になりやすいんだってよ。」となんの根拠もなく家人は
言います。
「そうよね。あなたはずっと物忘れしているから、なったかどうか誰にも判らないわよね。
本人も知らないかも。」と思い切り嫌味で返しても
「そうだよね~」と柳に風状態。
・・・・・たぶんこんな二人だからこそ成り立つ関係なのでしょうけれども・・・