不思議な友情

2023年09月22日

先日古い友人から電話を受けました。

これほど長く生きていると、本当に古い友人というのは百年・・いやいやさすがに

それはないですが、もう何年前か思い出せないこともあります。

彼女はだいぶ前に夫を亡くし、それからずっと一人で生きています。

もちろん仕事もしていますし、私とこれだけ長く付き合う位ですから、耐えて忍んでと

いうような生き様ではありません。

一時期「未亡人連合」を考えたこともありますが、最強すぎて空中分解しました(笑)

その古友が私に零すのです。

「先日友達から借金の申し出があったのよ。だけど、よく聞いたら借入金の返済だった

ので、断ったのよね。今ここで融通しても、所詮一回限りのことで、返済日は次はまたくる

でしょ。それなら早めにここで次の決心するように断るのも彼女のためかと思ったのよね」

それはその通りです。

私は古友の決断を支持します。ましてやこんな仕事をしている身です。

借金がらみでの浮気・失踪・詐欺行為などは十分に見聞きしています。

「でもね」

 

古友は続けます。

「私も彼女のためだとは思った。一時は辛くてもこういうことは一刻も早く、元から手を

打たなけりゃいけないと思ったのよ。でも、そうは言っても、苦しくて泣きそうな声で、

かけてきたのよ。どんなに辛かったのかと思うとね。それに応えられない私はもう彼女を

励ます資格はないかなと思って。」

 

思いもかけない古友の弱気な言い分に驚きはしましたが、なんだか判る気もします。

私もどちらかと言えば、自分の信じたことをやる時は他人の目を気にしない方だとは

思いますが、これが友達がらみだとやっぱり辛いです。鬼の目にも涙と家人は言いますが

鬼だって泣きます。

青鬼だって泣くじゃありせんか。・・それは泣く理由が違うような・・

 

「そうだね。その気持ちはよく判る。もう彼女には何も言えない。資格はないね。」

 

古友は電話の向こうで一瞬黙って、それからいつもの声に戻って言いました。

「あんたと友達でよかったわ。今は優しい言葉はいらないと思ってる時に、あんたの

その冷酷な言葉は刺さるね。その刺さった傷口が彼女の願いを断った私への罰かな。」

なんとも文学的表現ではありませんか。

「文学的やね。そんなタイプやないのに、よほど応えたか。たまには大人しくしておく

ことやね。」と受けると

「あんたって、ホントに優しくないね。なんでこんなに長いこと友達でいるんやろ」と

電話を切られました。

私こそ、それ言いたですわ。こんな悪態つきまくる二人の友情がホントに成立

していることが摩訶不思議です。。。

 

 


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