本当のことを伝えるには・・
さきほど「硫黄島上陸 友軍ハ地下ニ在リ」というルポを読み終えました。北海道新聞の記者
酒井聡平さんのお書きになったものです。新聞記者の書くノンフィクションですか、嘘のものは
混じってないのは判りますが、正直読み物としては、もうひとつもの足りないのです。
彼自身が硫黄島の遺骨収集団に参加して、その時のルポなのですが、都合四回の参加のなかに
山場がないのです。
もちろん、本当の事を淡々と述べることは大切で、誇張のない表現こそが真実というのは、ある種
正しいことだとは思います。
でも、彼自身がそうであったように、こういう行動に駆り立てるものが何かと考えてみると、それは
ある種のドラマチックな感動と共感が必要なのではないかと思うのです。
彼は祖父が父島の通信員で、硫黄島からの最後の打電を聞いた側の兵隊の孫としてと、書いていますが
それだけではないでしょう。
もちろんそれが中心にあっての話ですが、ちょっと前に話題になったクリントイーストウッドの
「硫黄島からの手紙」を見て心動かされたということも書いています。
そうなのです。私たち未経験のものが、その体験を辿るには一番に経験者から話を聞く。次に
それを物語として見るという事にあるのではないかと思います。
語り部たちが高齢になって、経験者がどんどん少なくなっていく今とこれからを、どうつないで
いくかと考えたら、やっぱりテレビや映画や小説の中で、それを追体験できるような、そんな
文化が必要なのではないかと思うのです。
そこで第一歩を記したなら、この本のように、真実だけを述べている本に出合いたくなります。読んで
読んで読み込んで、自らの意志を確かめたくなります。
私は今の自分の思想の素は、中学二年で切望してやっと手に入れた五味川純平氏の「人間の条件」に
あると思っています。若い頃は恥ずかしくてなかなか公言しませんでしたが、今では誰にでも
言えます。誰も聞いてはくれませんが(笑)
あれ以来、私はこの手の本を読んで、読んで、読み漁りました。映画も見ました。ドラマも見ました。
その当時は、今よりもずっとずっと、そういう戦争テーマの映画やドラマが多かったのです。
もちろん、見るのがいやになったもの、鼻で笑ったものも多々あります。でも、どれも読んで
みなければ判らない。
そう、読み続けること、見続けることが大切なのだと私は思います。
貴重な、大切なルポであればあるほどです。
今まで、あまり人に公開していないような心情までここに縷々とひけらかして、私もうあまり
後の時間がないのかしらなんて思っていると
「自分の言い分をひけらかしたいのは、年とった人のやることだよね。」とテレビの
コメンテーターのあの捻くれた〇川君が言ってました。
悔しいけれど・・それ当たってます。ただし私はあなたが思うほどの年ではありませんよ。
私の追体験は、母からの聞き伝えです。とうに亡くなった私の母は空襲体験者でした。
ただ、少し間の悪いことにうちの母は、多少話を誇張して話す癖がありました。
・・あ、はい。それは私と同じです。
なんて、ことりごちている日曜日の昼下がりです。。。