キュウリ5本

2024年09月12日

今に始まったことではないですが、テレビではよく「激安〇〇」なんて番組が流れます。

その〇〇には食堂が入ったり、スーパーが入ったりですが、どのチャンネルでも似た

ようなものが放映されているという事は、世の人たちがそれを求めているとテレビ局は

認識しているのでしょうね。

 

でも、あえて言いますが、あんなに丼に山盛りのご飯いりますか?

とんかつもスパゲティもハンバーグも盛り上げたランチがいりますか?

お安くするのは、各店の努力と熱意ですから、ほっとけよと言われればそれまで

なのですが、「サステナブル社会」を叫ぶ社会の反対側のようなこの企画、テレビ局は

どんな意識で放映しているのでしょう。

あんなにもりあげたご飯を残さず食べきるには若い胃袋と体力となにより熱い食欲が不可欠

です。このどれかが欠けても、完食は叶わないでしょう。

でも、残せる雰囲気ではありませんよね。感謝して完食するのがお約束のような撮り方です。

行列をなすこのお店の周りのお店はえらい迷惑だろうなとも思います。

 

そういうお店のオーナーさんはどの方も言います。

「採算なんていいから、お客さんが喜んでくれたら嬉しい」

もちろん、そういう気持ちでやっていらっしゃるのでしょうが、それって赤字垂れ流しって

ことですよ。

赤字のお店をお客さんが喜ぶからと続けていれば早暁潰れます。

そうなると、店主さんのおっしゃるお客さんのためになるのでしょうか。

 

そして周囲のお店は、仕入れと売値を考慮して損益分岐点を計算して・・なんて言いながら

激安と放映された、先のことは考えていないまるで特攻隊のような商売方法の激安店の

脅威に慄かされると思ったら・・もう番組を楽しめなくなりました。

 

尤も、私には往々にしてそういうところがあることは自覚しています。

ひとつの事象に対面すると、必ずその裏側を考えずにはおれないのです。

子供時代から「天邪鬼」と罵られてきた所以です。

 

そんな私が家人と見ていたテレビ番組が悪かった。

激安スーパー特集編。

千葉県の野菜の安いスーパーなのだそうです。キュウリやジャガイモが袋に入れ放題で

200円。そりゃあこんな時期の野菜の一袋200円は魅力ですよ。

でも、タレントのやすこさんのマイクの向こうにいるのは、それなりの主婦。

キャリアはもしかして50年?・・くらいかもしれません。

ビニール袋からはみ出した人参を積み木のように組み合わせ、袋からはみ出していれています。

「これでもいいんですか。」とやすこさん

「いいのよ。いつもこれでいいって言われてるのよ。」とキャリア主婦。

普通に袋に入れる2.5倍くらいの本数は確保しているでしょう。10本なんて数ではないですよ。

そして振り返りざま

「ほら、あの人も上手でしょ。」と別のキャリア主婦を指差します。

その向こうにはお城かと思うばかりの組み上げられたきゅうりを前に満足げな主婦。

一袋200です。五本も入れたら十分お安いではないですか。

それを20本はゆうにあるでしょう。

「たくさんだからお漬物にしましょうね」と婉然と微笑んでいます。

 

この袋入れ放題・・これも私苦手です。

袋の口が絶対閉まらないほど商品を溢れさせて「これで一袋ね」と平然としている主婦を

見ると同性として悲しくなります。

安いということをそれほど漁らなくてはいけませんか。

もちろん、みなさん普通の主婦です。ホームレスでもその妻でもないです。ないと

思います。本人に聞いていないので断言はできませんが。

その場に小さな子もいます。テレビで放映される以上それ以上の子供も視るでしょう。

その子らに、そんなことを自慢げに見せられますか。

袋にいっぱいいれていくらです。さあどうぞと言われて、入るだけとビニール袋広げ

積み上げてそれを自慢する大人になりたくはありません。

 

もともと一袋の価格は安く設定されているのです。ほどほどに入れても十分お安いのです。

綺麗に入れて「ありがとう。お安くしていただいて」と言いたいとは思いませんか。

これを家人は私の見栄と言います。

 

ええ、結構ですよ。「見栄っぱり」で。

でも、私はその行為を見ている子供や若い人に「あのばーさんせこいね」とは思われたく

ありません。それは私の大人としての矜持が傷つきます。

仕事の中心や世間的な立場は後進に譲るとしても、その生き方はいつまでも

私らしくありたいです。

決して裕福に暮らしている訳ではありませんが、キュウリ20本で食いつなぐほど

困窮している訳ではありません。5本で(・・いや7本くらいかな)よしとしたいです。

 

この年になって、生活の輪を狭めることと質を落とすことは別です。

毎日の美食はいりません。たまの贅沢が許される程度でいいです。

周りに尊敬はされなくても「おっ、あのばさーんちよっと違うね」と思われたいです。

そこいらのおねーちゃんやおにーちゃんには判ってもらえなくてもいいです。

 

「知ってるよ。少なくともわが子たちはね。キミが意地と見栄で生きてることは知ってる」

そうつぶやいた家人の言葉がすとんと胸に落ちました。。。

 


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