小豆島の夜

2020年08月28日

小豆島の南東に内海町という小さな集落があります。

かつては「岬の分教場」と呼ばれた分校があり、映画にもテレビドラマにも

なりました。

小豆島は案外(・・失礼)文学的要素の濃い処で、この分教場をモデルにした

「二十四の瞳」の作者、壷井栄さん、その夫の詩人壷井繁治。プロレタリア文学の

黒島傳治。自由律俳句の尾崎放哉と、なかなかのメンバーを揃えています。

そして、この尾崎放哉こそこの地で果てたというだけの因縁ですが、後の三人はここで

生まれ生活して、それぞれの道を目指したということでは、この小豆島という地は

角田光代さんの「八日目の蝉」よりも、もっともっと前に、注目されるはずなんたけど

などと思うのです。

 

そんなことを思いながら先日この内海にある「海音真里」さんに泊まってきました。

もともとはもっと内陸部に「島宿真里」さんがあって、一年前にその姉妹宿としてこの海音が

できたのだそうです。

 

目の前も後ろも海という絶景。

他にはなにもないというぜいたく。

海の見える半露天風呂で、日本酒を流し込んだお風呂に入る幸せ。

(家人はあまりの勿体なさに、涙がこぼれたと言いましたが、泣けば

いいのです。)

夕食は「オリーブ懐石」そりゃあ、小豆島ですものねぇ。

でも、正直言うと私はオリーブオイルをあまり美味しいとは思っていません。

サラサラの植物油で、確かに体にはいいのでしょう。

でも、だからと言って何にでも、かけまわるというのは、あまり

支持できないのです。

一皿目は、個性的な大皿に巨大なアスパラガスが一本。

左に三種類の塩や粉が少々と右にオリーブオイルが垂らしてあります。

 

とても気持ちのいい、スタッフさんが満面の笑顔で「地元産のアスパラです。

味わっていただくために、生のままでオイルをつけて召し上がってください。」

食べました。一応こういうときは、プロのお薦めに従うことにしてるのです。

しかし・・太くて長くて薄い色のアスパラガスは、独特のえぐみとぱらぱの

食感を私の口に残しただけでした。

・・・・これがアミューズ?

そう思ったら急に期待が萎んでいくのが判りました。三分の一で放棄した

アスパラを見て、家人も不安げです。

私は自分の味覚を頼りに食事をしますから、どんなに食べログ評価が

高くても、星が何個もついていても、自分がいやなものは「星三っつだから」と

言われても受け入れられない性質なのです。

 

そのまま食べずに、退席したらどんな言い訳しょうなんて考えているのが

手に取るように判りました。

 

ところが、その後のお料理の美味しかったこと。野菜もお肉もお魚も。

ただ、その理由は事毎に薦められたオリーブオイルではなく「醬」にありました。

ご存じのように、ここはお醤油とそうめんの島でもあるのです。

菊醤という樽仕込みの醤油は私も大好きです。

 

その「ひしお」まろやかで芳醇な「もろみ」です。

私を虜にしたのはこれ・・この「ひしお」と「もろみ」です。

これは本当に美味しかった。何につけても震えるほどの美味しさが

広がって、失礼ながらオリーブオイルなんて目じゃない。

やっぱり、私は骨の髄から日本人だったようです。

 

夜になると、ベランダの向こうの海に停泊している客船の灯りが

キラキラとまるでシンデレラ城のようです。

こんなロマンチックな夜が身近にあるのです。

波の音をBGMに、大好きな宮部みゆきさんの小説を読み耽る幸せ。

夜は長く優しくふけていきます。

明日の目覚めもきっと心地よいでしょう。。。おやすみなさい。

 

 

 

 

 

 

 


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