知床の海
先日来から知床の観光船の遭難ニュースが駆け巡っております。
思い返せば2015年の9月に、私たちも知床で観光船に乗りました。運航会社がどこかは
覚えておりませんが、前日にウトロ港の「北こぶし」で宿泊して翌日、乗船しょうとしたら
ホテルで「本日は波が高いので遊覧船は中止です」と聞かされ、がっかりしたのですが
その後、私たちの希望の長コース(知床岬の先端まで行って帰るコースです。今回の事故と
同じコースですね)は船は出さないけれど、半分まで行って引き返してくるなら出航しますとの
連絡を受け「折角来たんだから、明日に賭けて今日は止めようよ」と言う家人の提案を
軽く蹴とばして、私が当日の短コースに決めました。
今ニュースに流れているように、まずはチケット買って、船までぞろぞろ歩いている間に見えるのが
ゴジラ岩。たしかにそう見えないこともありませんでした。
私たちの船がその日の一番船ですが、次々と他汽船の船も出始め、なかなかにぎやかな出航となりました。
岬の半分までとはいえ、しっかりヒグマが岩場を徘徊しているのも見えて、知床の自然を十分満喫した
ものでした。
船長さんも若い乗組員さんも感じがよく、彼は大学生と言ってました。今回も乗組員さんは若い人で
たぶんどこもこんなかんじなのでしょう。
それが鮮明に思い出されると、今回の遭難の場がどれほど熾烈であったかが、より胸に
迫ります。
浸水して水温は5℃とか1℃とか聞いていいるなかで、海に飛び込む選択はあったでしょうか。
しかも、岸辺に近づいていたとしても、そこにはヒグマがウロウロしているのですよ。
その岸に向かって泳ぐ気持ちになれるでしょうか。
「前門の虎後門の狼」とはこういう気持ちなのでしょうね。
しかもライフジャケットというのは、浮きはしますが泳ぐことは案外できないのです。
(私はそれをハワイの天国の海ツアーで実体験しました。実際に1キロは軽く泳ぎきる自信は
あったのですが、シュノーケルを付けて泳ぐ私は進まない・・進まない。インストラクターの
お姉さんが憐れんで同伴してくれましたが、私は泳げるもん!と叫びたかったです・・
と、まあこんな余談はさておいて・・)
遭難の原因と事情はこれからおいおいつまびらかにされるでしょうが、
探索現場をテレビで俯瞰して見ていると、つくづく思うのはなんで他の船が
行かなかったのに、単独で出航したのかということです。
私たちが行った時は周りに同じような遊覧船や漁船もたくさんいました。
もしものことがあったら、彼らはなんの躊躇もなく救助してくれたでしょう。
でも、今回はこの船だけで、周りにはどんな船もいない。そんなときに
なぜ出航したのか・・それが返す返すも残念です。
どんなハイスペックな船が二時間かけて救助に来ようとも、そぐそばの漁船の方が
確実に命を救うことが可能なことは明白です。
知床が世界遺産と認定されたその理由は自然のままということなのですから、
その自然のままの中では人間はいとも脆く弱く力のない生物だと、今一度思い返す
べきでしょう。
日記を読み返せば、そのあと私たちは羅臼に向ってその道すがらエゾシカに遭遇しています。
知床半島というのは、こういう処なのだということをしみじみ思い知りました。
亡くなられた皆様や、いまだ発見されない皆様には心から哀悼の意を表します。。。