神秘の月

2022年11月15日

先日、友人たちと淡路島に泊まった夜は「皆既月食」の日のことでした。

半ば恒例化しているこの大人の修学旅行の当日が月食に当たるなんて、最高!

もちろん、天体望遠鏡を車に積み込み、向こうのベランダに設置して、用意万端あとは月を

待つだけ・・にしておきました。

その日は餃子が50個に麻婆豆腐と中華キュウリ。レトロ小路でたねさんの叉焼を二本買って来ての

宴会準備は万端。ささやかなものですが・・なにしろみな、貧乏性ときていますから、これで

充分。金銭感覚の同一性というのは、ホント大事ですよねぇ。しみじみ・・

そんなこんなしているうちに時間がやってきて、師匠がうちの天体望遠鏡を上手にセットしています。

あれ??  あれってどこのだったっけ・・と持ち主が思ってしまう手際のよさ。さすがです。

そしてセットしながら、本日の天体講義が始まります。

月の位置と地球の位置。そして今夜の主役天王星の位置。

あー学生時代にこんな講義だったら、もっと熱心に聞いて、今頃は違う世界があったかもしれないのにと

あとで家人と話し合ったことでした。

師匠の二女と私の娘は幼馴染で、いまでもラインで繋がっておりますので、向こうは向こうで

親たちの騒ぎをしらーっと見ていることでしょう。

 

でも、天体望遠鏡ってすごいですよね。どうやっても裸眼では見れない月の色彩の加減が

はっきりくっきりと見えるのですよ。

赤い月・・確かにテレビで言う通りでした。

でも、その赤は絵具のアカではなくて、褐色に土の混ざった橙色。それがベースのようです。

月はやはり人を寄せ付けない場所であることがその色で判ります。

暖かいけれど受け入れる色合いではありません。

その神秘の赤橙が濃かったり、薄かったりでそこに出来た凹凸は月の翳です。

この翳のどこかに、悪や闇や黒いものが隠されているのです。

どこから見ても判らぬように、触れられぬように・・

 

しばらくすると天王星がどんどん月に近づいていきます。やがて飲み込まれるように月の

裏側(こちらから見たらですけれど)に、入り込んで、やがて出てきます。彼らはこの間に

月に何を残していったのでしょう。

彼ら自身の足跡なのか、彼らが私たち地球人に見せてくれた「宇宙パフォーマンス」と言う名の

ダンスなのか・・

家人も師匠もそしてお友達ももう天体望遠鏡にかかりきり。

外が寒くもないので、いつまでもベランダでいられます。

しかも、ここの月は海の上に上がるので遮るものがなにもない。

海の上の煌々として月と波に映される月の光のキラキラとした輝きだけ。

こんな素敵な贅沢な夜があるでしょうか。餃子たべながら・・

(カクテルとカナッペかなんかにしとけばよかった・・)←後悔後に立たず。

 

この天体望遠鏡は亡夫が買ったものですが、殆ど使っておりません。

思わず海にむかって「ありがとう~」と声を掛けようかと思いましたが

「オレも視たかった~」と今夜枕元に出られても困ります。ここは胸の中だけに

収めることにしました。

息子にこの話をすると「向こうは案外目の前で見てるんじゃない」とクールな言い草。

私もちょっと同意しましたけどね。

 

それにしても、月は偉大ですね。

月はヒトを子供に還してくれます。いくつであっても、星や月を見て騒いでいたあの頃に

還してくれます。

そしてお友達との間を、もっと近づけてくれます。

星や月の嫌いな人を、私はいまだ見たことがありません。

黒い海にかかる月からの光は、本当にかぐや姫の道のようで、ここ淡路島で私が一番好きな

風景です。

波の音に揺られながら、たゆたゆと光る海を何ともなしに眺めている。極上の空間ですよ。

 

「あ、あれ。あれれ・・月が、月がどこ行った・・」こんな余韻に浸る私を現実に戻すこの声。

私が舌切り雀のおばあさんだったら、迷わずその下をハサミでぶち切ってやりますよ。

なんの躊躇いもなくね。

そう思いながら見ていた水面の先をぴょんびょんと駆け抜けていったあの兎が、振り返ったら

よーく知った顔してましたわ。。。

 

 

 

 

 

 


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