年末のATM機
息子も東京に帰って、また穏やかな二人の生活が戻ってきました。・・ボクは決して
穏やかではありませんけど呟く声は無視しています。
クリスマスが終わると、地元百貨店の特設会場で(去年から五階になりましたが、
それまでは入り口のライオンの隣で、学生アルバイト君が寒風に晒されながら
しめ縄を売っており、それを買うのが恒例行事でした。
ところが・・今年はない。
ライオンの横はありません。去年買えたくらいですから、元に戻ることは
ないでしょう。そのまま五階に行ってもない・・呉服売り場の男性が問合せしてくれた
のですが、やっぱりない。・・ってこの時季、しめ縄の売り場聞かれて、受付に電話問合せ
しないと判らないの? とは思いましたけど。
どうみてもアルバイトじゃないし、それなりのお年だし、ここでの年越しは初めてとは
思えないし・・といろいろ不満はありましたが、それは飲み込みました。
これ、私のささやかな年中行事です。これで一年の締めくくりの決め事としていたのに
私のこの習慣をどうしてくれる?
こんなささやかな、購買客なんてなんとも思ってないのは判るよ。でも行事ことをこんな風に
粗末に扱うから、百貨店ってこうなったんじゃない?
もう昔みたいに百貨店に若い子は来ないのよ。子供もこない。だって屋上に遊園地ないし、
レストランのお子様ランチないし。子供がこないから子育て世代もこない。
いま、百貨店のお客の大部分は高齢の男女とインバウンドの外国客ですよ。
なのに、こんな風に昔の風習や、習慣をいとも簡単に切り捨てる・・これじゃ百貨店に
先はないわね。それは判っていましたが、ますます加速しますよね。
今年は私、ロフトで買いました。しめ縄。
おしゃれで斬新なしめ縄。そうそういうものなら、わざわざ百貨店で買わなくても、
ロフトやハンズに溢れるほどあります。
悪態つきながら、銀行ATMへ。
ここは近年支店が廃止され、ATM機だけです。しかも銀行強盗に遭ったかのように、五基あった
機械が二基にまで減っています。そしてそのぶん列ができています。
いいですよ。並んでもね。仕方ない。
でも、なんども機械音で「もう一度はじめからやり直してください。」と言うのが聞こえる
おばあさんと、会社の経理なのかと思うようなお姉さん。
どっちも長い・・
通帳とカードを用意している手が痺れそう・・
思わず時計をみる。あれから10分・・11.12.13.14.・・
目を上げたら、お姉さんと目が合いました。機械の正面上は鏡になっているようですね。
さすがにお姉さんは焦っているようでした。私のうしろにも数人並んでいます。
でも、おばあさんは我関せず。もう何度目かの「もう一度・・」が流れています。
これって、もしかして同じこと繰り返しているのでは? と、思っても私の並んでいる
処からは見えません。見えたとしても、行く訳にはいかないでしょうし。
あきらめかけた私の視線に振り返るお姉さん。片手を持っているトートーバックに入れて
歩いてくるではありませんか。
あ、やっと来た。私は嬉々として、その機に行き、できる限りの短時間でお正月用の現金を
引き出して、カードも通帳も、バックに放り込んでそそくさとその場を離れようと、
振り返りました。
そうしたら、私の後ろの三番目に、あのお姉さんがまた並んでいるのです。
・・・そうなのです。あのお姉さんは、となりのおばあさんのことや、待ちわびている私の
ことや、周りのことをいろいろ慮って、途中でやめて、もう一度並び直してくれたのです。
私は感激しました。
ちょっと前に、違う銀行で、同じようにATM機を占領したハゲおじさん(失礼)とはえらい違いです。
私はすれ違いざま、感謝のまなざしで会釈しました。彼女もぎこちなく会釈を返して
くれました。
おばあさん・・あなたを責めはしないけれど、「もう一度の」のアナウンスが続いたら、
機械操作あきらめて、すぐそばの本店に行きませんか。
親切丁寧な行員さんが、きっと手取り足取り教えてくれますよ。
あなたも忙しいかもしれないけれど、こんな時は働く人を優先してあげましょうよ。
たぶん、彼女よりあなたの方が自由時間は多いはずです。
年末にこんなことを囁く私は、やっぱり鬼ババキャラですかね。。。