男の更年期
四月に入ると、陽射しは一気に夏に近くなってきました。
うふふとほくそ笑む私の隣で、家人は憂鬱そうな顔しています。
「もしかしたら、更年期かもしれない」と、ぼそっと言います。
男性の更年期障害を知ったのは、私の年上の従兄が罹ったからです。
私より七歳年上で、子供時代は大好きなお兄ちゃんでしたが、年月とともに敵対しあい
はては叔母の葬儀で罵り合った関係です。今更ながらお恥ずかしい・・・
若気の至りとはいえ、あの時私には罵り合う理由があったのです。このことは今でも
後悔はしておりません。
それ以降は疎遠にしておりましたが、父の葬儀に来てくれました。10何年振りの彼は
見誤るばかりの豹変ぶりでしたね。私の知っている傲岸で気難しい職人の面影は一欠けらも
感じませんでした。
背を丸め、黙ったままで父の枕元に座る姿はなにやら声がかけられなくて。
私が遅くして生まれた子だったので、彼は甥として父に可愛がられて育ちましたから、
私といくら葛藤があったとはいえ、来てくれたようです。
尤も、父も私と彼とが言い争った時「これ(私のことです)は、気が強いからなあ。言うても
引かんのや。」と彼の肩を持ったことを私は忘れません。
・・いつまで覚えてんるやと息子は呆れますが・・
ま、そんな彼が当時罹患していたのが「男の更年期」です。
いつものように前置きばっかりになってしまいましたが、その「男の更年期」が
時折テレビで聞かれるようになったのは最近のことです。
これは女性が男性化したように男性も女性化したのでしょうか。
それとも、お互いの中の異性が、昨今のジェンダー神風で、吹き飛ばされてしまった
せいでしょうか。
こんなことまで、男女同じにならなくても・・なんて呟いたら、昨今は性差別と
糾弾されかねないご時世ですものね。
家人の一言で、こんなことを思い出すなんて、私の、本当に私的な恨み言です。
忘れられないって、ホントに不幸です。。。