悪態

2024年02月22日

春一番はもう吹いて、体感的にはすっかり「春」です。

どんよりとした空は好きではありませんがこれも「花曇り」なんて言いかえれば

素敵に響くのも、日本語の妙ですね。

 

仕事の形態を変えてから、私の時間は増えました。もともと、仕事と私事の区別がないのが

この仕事ではありますが、自分に合わせて仕事ができると言うのは幸せなことです。

他人様のように、平日とか休日とかの決まり事がないと、こんなに自由に生きられるというのは

なかなかに魅力的です。

日々衰え行く身体とは裏腹におかげさまで頭と口はますます冴えわたり、周囲に威圧と迷惑(?)を

かけ続けておりますが、それも私の生きる糧と、受け入れてくださりありがとうございます。

・・いや、誰も受け入れてはいませんが・・というかげの声は、この際聞かなかったことにして。

 

今日は息子の誕生日です。

もう何十年か前に彼を産み落とした時のことは鮮明に覚えています。

初めての陣痛に慄きながらも、出産後一か月は活字を見てはいけないという実母からの迷信を信じて

読みかけた「続・白い巨塔」をこのまま一か月も待ちきれないと、読み通し、真夜中に陣痛間隔が

短くなって夫を揺り起こし、病院まで連れて行ってもらうときに「いいね。スピード出し放題。

パトカーに止められたら、嫁が陣痛でって言える」と、アホなセリフを吐きながら嬉々として運転

していた若き日の夫の横顔を、あきれて見ていた私は当時から「鬼嫁」ではあった気がします。

そして本当はそんなこと、忘れてあげるのが愛情とは思うものの、どうしても忘れられない厄介な

自分の記憶力を持て余すのです。

 

なのに母からの迷信を無碍にして、翌日から「新生児の名前」という本をむさぼり読む羽目に

なったのは義兄のひとこと。

私達の決めた息子の名前を見て「これは縁起がわるい。字画が最悪」と宣告されたことでした。

「では、何画ならいいんです?」と聞いた私の質問はかるーく無視されました。

 

もちろん私はならば、それでいいじゃん。私たちの決めた名前で。と開き直りましたが(性格としては

こうなりますよね)

夫はそれが出来ず、悩み始めたのです。名前を変える・・それは、最後まで言わせず却下しました。

例え兄弟とはいえ、私たちの子です。そんな余計な一言で変えるなんて、考えられません。

そしてそんなことで悩み始めた夫に深く失望しました。

それでも、悩み続ける夫の妥協案は「名前の読みは変えない。でも字は変えてもいいんやない?」

なんと、優柔不断な選択でしょう。

 

喧々諤々と新米の父と母は議論を重ね、本にすがりました。それが「新生児の本」です。

出産翌日から、辞書並みの厚さの本を繰る私を見て母は怒りました。昔の人間ですから、

出産後にこんなことしたら、本当に目が見えなくなると半ば信じていたようです。

その時は一笑に付した親不孝者ですが、今は母のその愛が判ります。

理由を話すと、今度は義兄と夫に対して怒りました。

自分勝手で口の悪い無学の母でしたから容赦はありません。でも、そのあからさまな罵倒を

聞きながら、なんだか胸の奥がすっとしてくるのです。

自分の為に、こうも赤裸々に誰かに怒ってくれる人がいることは幸せです。

今はそのことに気付きましたが、当時の私は機微のなんたるかを知らない半端者でした。

そんなことを思い出したら、雨がぽつりと落ちてきました。

 

「今頃わかったか」悪態ついている母の声が雨に混じっているようです。

子供の誕生日に母を想い出す・・やっぱり私の思考回路は少し斜めであるようです。

そしてそんな自分がちよっと好きなんですけどね。。。

 

 

 

 


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