ホワイトアウトの夜

2019年11月16日

北海道はホワイトアウトと報道されていましたね。

私がこの「ホワイトアウト」という言葉を最初に知ったのは、真保裕一氏の小説でした。

後に織田裕二さんと松島奈々子さんで映画になりました。かなりがっかりしましたが。

あの小説の中のホワイトアウトは凄かった。

白い地獄と確か帯に書いてありましたが、白い地獄は黒い地獄よりも赤い地獄よりも、

優し気に響くのにそこから出られない。これこそまさしく真綿で首を絞められるような・・

しかもこの白い地獄は、日本では案外頻繁に起こっているのです。

 

井上靖氏の名作に「氷壁」がありますが、あれは一定の場所の、しかも自らが選んだ場所での

出来事です。

しかし、ホワイトアウトは、小説では一定の場所の一定の期間だけの話ですが、北海道や東北では

当たり前のように冬の間には何回か、訪れるらしいことは、そののちの佐々木譲さんの小説で知りました。

こんな時は誰も家から出ず、ただひたすら嵐の過ぎ去るのを待つ。それしかやれることはない。

そんな描写があったような。。

 

そんなこと考えていたらやはり行きつくところは「八甲田山死の彷徨」ですね。

新田次郎氏の名作で、私は最初にこれを読んだときに、茫然としてしまいました。

あまりの真実の残酷と実写。歴史の残酷。日本の軍隊の蒙昧。上下関係の絶望。そして自然の力の偉大と猛威と

いう言葉の本当の意味を知りました。

これものちに映画になりました。

高倉健さん。北大路欣也さん、三国連太郎さんなど、当時の映画界の錚々たるメンバーを集めた

映画ですから見応えあって当然でしょうが、何よりその自然の圧力の前では、ただただ黙して

画面を食入るように見つめるだけでした。

その後、この映画はたびたびテレビで放映されています。WOWOWの夏の風物詩と言っていいくらいの

回数です。でも、そのたびに私は見ています。

番組表にあると、見ずにはいられないのです。

たぶんこの映画が私の自分史上最多視聴映画であることは間違いありません。

 

成り行き主義の私が、最も自然を感じ畏れ敬い、その力の前で非力な自分をかみしめる謙虚を

感じるひと時です。

こんな魔女相談員にも、一年に一度くらいは、そういう時があってもいいでしょう。

 

北海道のホワイトアウトが誰の犠牲もなく無事に過ぎ去りますようにと願うばかりです。

 

 

 

 


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