親として生きるなら

2019年12月17日

親の気持ちとは切なく辛いものだと、この二、三日の報道でしみじみ感じました。

そうです。あの農水省の元次官が家庭内暴力のひきこもり息子を刺殺したあの事件の判決を報道する

一連のニュースです。

賛否両論は尤もでしょうが、私にはどうしても父親のこの行動を否とする理由が思いつかないのです。

 

判決で「心情はあまりあるが、どこからに相談するとかの手段もあった」と、裁判官は述べていましたが

どこかの専門機関に相談していたら、長男は改善していたのですか?

改善していなくても、相談さえしていたら、こんなことになったとき「相談していたのだから」と

何か斟酌していただけるのですか?

いわゆる専門家と言われる方たちでさえ、効果的な治療法や対処法が見つけられていないのが現状では

ないですか。

また、相談さえしていたら、斟酌されるなんて、それはある種の「逃げ」「責任の転嫁」ですよね。

 

私は古い人間ですので、自分の子供のことを誰かに相談しょうとは思わないです。ましてや、専門家と言われても

それまで自分たちとは全く違う世界にいて、これまでの自分たちの道のりを知らない人から、自分たちの親子関係を

分析されても、直には従えないです。

他人には計り知れない関係にあるのが親と子だと思っていますから。

私はこの父親と同じスパイラルに絡めとられる人間だと思います。いや確信します。

 

わが子は例の酒鬼薔薇世代で、小学生からもう「いじめ」とは無縁ではいられない時でした。

私は彼らに「あなたたちがいじめられたら、私は相手を絶対に許さない。誰が許しても私はゆるなさい。

一生そいつに付きまとって、そいつの周囲のあらゆる人に、こいつはいじめる側の人間で。クズです。最低ですと

吹聴しまわって、そいつの人生もずたずたにしてやる。」と伝えておりました。

 

後に娘は「あれは怖かった。この人ならほんとにやると思ってたわ。」と述懐しておりましたが、私は子供には

なるべく嘘はつかないということを教訓にしておりましたので、嘘とは思わなかったのでしょうし、私ももちろん本気です。

幸か不幸か二人の子供は、多少のいじめはあったらしい(大人になって聞きました)のですが、なんとか自分で解決したようで

狂気の母の出番はなかったのですが、この父の苦悩は同じ子を持つ親として、身に沁みてよくわかります。

 

読んでくださる方のドン引きも、その他の批判と誤解も覚悟でいうなら、そういう子供を持ったならば親は「諸共」に

生き「諸共」に死すしかないのだと私は思っています。かの父も同じ思いか、それに近い思いであったのだろうと

推察しました。

このことを世間がどんなに非難しょうと、間違いと糾弾しょうと、罵声を浴びせられようとも、子は諸共です。

 

その覚悟で産み育てました。

かの父の年齢での「懲役6年」は、過酷であろうと思います。しかし、彼は執行猶予は望まないとも思います。

そしてそんな彼を、日本の片隅で私は秘かに応援しています。

声には出さなくても、表立って叫ぶことはなくても、こんな親は私以外にもまだまだいると思います。

そんなささやかな鎮魂と、静かな声援が、かの父に届きますように・・・

 

 

 


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