彼女の場合

2020年04月14日

連日の冷たい雨がやっとあがりました。

二日前に相談電話をいただいた牧尾さん(仮名です)は、待ち合わせ場所になかなか

見えませんでした。何回かお電話しても出ず。ま、私は何を隠そうアポキャン女王と

呼ばれた女ですから、こういうシュチェーションには慣れてはいますけれどもね。

 

もうこれまでかと席を立とうとしたとき携帯が鳴りました。

牧尾さんです。行きがけに子供が熱をだしたと保育園から電話があり迎えに

言ってましたと。

あらあら、それでは面談どころではないでしょうにと思ったのですが、

そのあと彼女はママ友を辿って一時間だけ預かって貰う段取りをつけたと

言うのです。

正直迷いました。一時間では話の途中に時間切れになる恐れは十分にあります。

しかし、そうまでして時間を作った彼女には、彼女なりの切羽詰まった事情が

あるに違いないのです。

 

そう思ったら折角彼女の作った時間を無にするなんてできるはずがありません。

20才という牧尾さんは年よりずっと落ち着いていました。

2才の子供がいますから、見方によったら遊んだ子かなと思っていたのですが、

それは覆されました。

 

お話を聞けば、夫は一つ上の21才。若いですが、父の会社から系列の別会社を

作っていまはその社長です。その夫が夜の店でキャバ嬢と知り合い、その女を

事務員として雇い入れたことが浮気発覚の発端でした。

それまで会社の経理を仕切っていた牧尾さんはその女の仕事っぶりには

我慢できませんでした。

読み書きは満足にできない。計算はできない。宛名を書かせたら切手を

封筒の蓋側に貼り付けるなど、目を覆うような仕事ぶりです。

 

それでも女を辞めさせない夫を不審に思わない妻はいないでしょう。

そして突然の離婚要求。

もう何が何だか判りませんと牧尾さんは言います。

夫は「離婚する」の1点張り。離婚してくれではなく離婚すると

言う言い方にこの男の傲慢が見え隠れしています。

 

見栄っ張りの夫は、養育費も払う。車も買ってやる。でも慰謝料は払わないと

言うのです。

慰謝料なんて払う理由がないというのが彼の言い分です。

 

拘る男は好きですが、自分の罪を認めない男は唾棄するほど嫌いです。

そしてこんな相手ほど、私の闘志は燃えるのです。

年若い母親の牧尾さんは、この夫には勿体ないと私は思うのですが

彼女は離婚の話になったら、みるみる涙を湛えてこらえています。

まだこんなに若い彼女が、こんなことで泣く姿は気の毒でしかありません。

こんな男を選んだのは、文字通り「若気の至り」だったのでしょう。

しかし、彼女はみるみると大人の女になり、妻になり、母になりました。

夫はそれについていけなかったのでしょう。

賢い人とそれについていけなかった人の、不幸な落差です。

こんな人を私はほっとけないのです。

おせっかいな魔女相談員は、この一時間に魂を込めるべく、

姿勢を糺しました。。。

 

 

 

 

 


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