懐古の麻衣子さん

2020年08月20日

人の幸不幸は紙一重です。この仕事をしているとそれが

よくわかります。

良いことの裏には悪いことがあり、誰かの微笑みの裏には

誰かの涙があるのです。

 

ずいぶん前のことになりますが、夫の浮気調査でご相談いただいた麻衣子さん(仮名)は

当時はもうボロボロの状態でした。

夫は職場の部下と不倫をしており、部下は夫の子供を身ごもって、夫に自分との結婚を

迫っていたようです。

麻衣子さんは、浮気をする夫がお金を入れないため、夜のラーメン屋でアルバイトを

していました。そこで働く男性アルバイトに相談があると持ち掛けられ、それも人には

聞かれたくないからと懇願されてラブホテルで延々し自分の彼女の浮気話を聞かされました。

思えば自分の同じような境遇で、人の好いよい麻衣子さんは思わず力が入って聞いてあげた

そうです。そうしてホテルをでると、バシッ!とフラッシュが焚かれ、あれよあれよという間に

夫と見知らぬ人に囲まれてしまいました。

浮気と責め立てられ、事情を説明しょうとアルバイトを探すのですが、その時には彼はもう

いませんでした。

のちに判ったことですが、このアルバイトたまたま夫の中学の後輩で、夫にお金を

握らされて、こういう役割を請け負ってたのだそうです。

 

これを証拠に麻衣子さんは否応なしに実家に帰され、一人息子も夫に取られました。

実家に帰った麻衣子さんが、どうしても子どもだけは引き取りたいと、相談電話を

かけてきました。

 

これは少々難しいです。いや、かなり難しいです。

仮に夫と部下との浮気証拠を取ったとしても、夫は麻衣子さんの浮気を盾に

闘ってくるでしょう。どちらが先かを実証するのなかなか困難です。

それでも、まず夫の浮気証拠を取らねば話になりませんので、実働開始です。

 

結局、夫と部下の浮気現場はばっちり押さえられました。

息子も案外簡単に手放しました。夫は子供を手元に置いておかないと

養育費を払わなければならないのが、厭で親権を主張したらしいのです。

彼はなかなかの高給取りでしたが、合理性のないお金はびた一文払いたく

ないのだそうです。

麻衣子さんが、育てるのなら、自分の養育費が、子供にどう使われるか明細を

毎月出してくれと言ってきたそうです。そして彼は毎月それを検証する男だと

麻衣子さんは言います。

でも、部下の方が、生まれてくる自分の子供のことを考えてか、息子を引き取ることに

難色をしめし、揉めにもめたのですが、結局養育費なしということで、親権は麻衣子さんの

ものになりました。

 

人が好いとはいえ、軽率にラブホテルなどで、身の上相談を聞いた私が悪いんです。

でも、子供が手元にかえるならそれで充分ですと清々しく笑っていた麻衣子さんか

手紙が届いたのは二年後です。

 

なんと読んでびっくり。

彼女は元夫との離婚裁判の時に、自分の弁護をしてくれた弁護士さんの妻に

なっていました。弁護士さんもバツイチで、元夫のあまりのやりように憤慨して

力になってくれたのがきっかけと綿々と綴ってありました。

 

あれから6年になります。

時々、麻衣子さんからお手紙が届きます。

ご自分の近況と、元夫の近況が書かれています。

なんで、今でもと思ったこともありましたが、こうして

私にお互いの近況を知らせることで、彼女なりの折り合いを

付けているのだなと思います。

それにしても、元夫の方はDVのあげく妻には逃げられ、自分も

職場を解雇され、今は失業中とか悲観的なことばかりが、妙に詳細です。

私に知らせるためか、自分の気持ちの落し処をまだ探していて

それを見つけるためかは判りませんが、女の執念とは恐ろしいものです。

 

今はどうぞ麻衣子さんに幸せの裏側からの接近がありませんようにと

祈るばかりです。。。

 

 

 

 

 


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