四国カルストの夜 ②

2020年09月13日

真夜中にも起きだして、完全冬装備で建物の外に出ると、ちらほらと

人影はあります。時折前下の道を真っ暗な西に向かって走る車があります。

星の位置を確かめに姫鶴平に走っているのではないかと思われます。

もう天の川は見えませんが、清冽な空に点在する星はまた姿を変えています。

残念ながら流れ星には遭遇しませんでしたが、星が動くということを実感しました。

 

そしてまたひと眠りして次は夜明け前です。山影になる東の空がすこしだけ

茜色に染まっていますが、正面の山々のシルエットには朝霧が薄く広がって

一幅の墨絵のようです。日の出を待ちきれない私たちは、そこから30分ほどの

大野が原に朝いちばんの搾りたて牛乳を飲みに行くことにしました。

道はまさしく「ぼつんと一軒家」への道です。

たまたま道行く人に声を掛けたら「おいで、おいで」と案内してくれて

紙コップにどくどく注がれる牛乳。それはそれは濃く美味しかったです。

午前中に散歩も終え、天狗荘を後にした私たちは雲の上ホテルのプールを

目指します。ところが時間が合わずに、已む得ず梼原の町に行くことにしました。

 

そこで、目にしたのは「木の図書館」高名な建築家隈研吾氏の作品です。

その素晴らしさは、まさしく息をのむ・・としか言いようがありません。

斬新で現代的で、ノスタルジック・・天井からの組木細工のような柱とでーんと

真ん中に位置するオープン階段。

誰もがその威容に圧倒されるはずです。しかも、その蔵書管理のすばらしさ。

まず古い本のにおいがしない。

本好きを自任する私ですが、あの図書館の古い本のにおいは苦手なのです。

なぜかは説明すると、とても長くなるのでまたの機会にしますが、ここには

その不快感が全くない。

明るく開放的な読書スペースは、確かに狭いのですが、立体的な作られた

蔵書スペースを考えたら納得できます。

ここは、読み手が本を手にし易いというより、本たちがどう綺麗に見えるかに、

重点を置いているだと思います。

それでよいのだと私は思います。図書館の主役は人間ではなく、「本」

なのですから。

もうここから動きたくないと、正直思いましたが、それが許されるはずがなく

心を残して後にしました。

 

前日に立ち寄った道の駅で、取り置きしてもらっていた切株の手作り椅子を

引き取って一路帰宅の途についたのですが、私たちの中では、四国カルストは

定期行事になりそうです。

そして来年は、もっと早めに自宅を出て、あの図書館に三時間は居られるように

予定を組みます。

それを考えると、今からわくわくします。

私にとって、あの図書館はディズニーランド以上のパラダイスです。

今回の四国カルスト行は、天の川と図書館という異質の美と、楽しさを

味合わせてくれました。

生きていると、まだまだ素敵なことは沢山ありそうです。。。

 

 

 

 


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