焚火は語らせます

2021年03月26日

先日、友人夫妻と一緒に隣県のキャンプ場に行って参りました。

大河の流れにそった広大な土地に、フリーのキャンプスペースやオートキャンプ

スペース。キャンピングカーの専用スペースもあり、コテージも10棟以上あります。

 

私たちはそのコテージを一棟予約して大人四人で泊りました。定員五名とはいうものの

人数的には四人が丁度よいぐらいです。

ただ管理人さんは七名までなら泊まれますよ。定員以上分の寝具だけ貸出もしますと

まあ、至れり尽くせりです。

 

家人は先日来もうすっかり焚火に嵌まりこんで、その友人夫を「師匠」と心の中で

呼んでいるそうです。その師匠と妻。家人と私の四人です。

まず初日から私たちは待ち合わせに遅刻。

当該地まで一時間以上はかかると言うのに、自分のビールの確保しか考えていない

家人はこともあろうに自宅近くのスーパーの開店を待って、それからの出発です。

ときたまラインで途中経過を報告しますが、当然師匠夫妻は約束時間前に着いています。

 

30分遅れて、私たちが到着して管理等に行くと受付の方がにこやかに「もう先着の方が

炭を熾していらっしゃいますよ。すぐできます。」

さすがっ!と思いつつ、自らの至らなさに、もちろん家人を罵倒しました。

 

お詫びと思ったのか、家人は焼き方に徹し、ほいほいと焼き上げます。スーパーの

お肉でもなんと美味しいこと。その片手間に、私と師匠妻はローストビーフの準備も

します。肉は買っていったものの、調味料などは全部、師匠におんぶにだっこ状態。

すりおろしにんにくと、塩、コショウ、シーズニングスパイスを十分に肉に擦り込み

寝かせてから、フライパンで焼き付け、ホイルで二重にくるんでダッチオーブンへ。

時間を計れだの、串をさして焼け具合をみろだの、煩い外野の家人は吠えさせておいて、

私は、私時間で肉を焼きます。

 

午後になってBBQが終わると、コテージに移動です。

木のかも香しい山小屋風の建物で、中は広いです、ダイニングのテーブルも

6人用。ベットルームと和室がひとつ。

四人でなら十分です。

 

そこで今度は夜の準備。今回は師匠妻のリクエストでなんと「天ぷら」

キャンプ場でお座敷天ぷら・・どうよ? (笑)

私と師匠妻がお座敷天ぷらの用意をしている間に男性二人は焚火の準備です。

薪も師匠が十分用意してくれています。

「ソロキャンプのYouTube見てると、食ってばっかりやけど、ソロでなくても

やっぱり食うばっかりやな」と笑いながら準備は進みます。

いい具合に空は茜色に染まりつつあり、シルエットが妙にかっこよく映ります。

 

私たちが天ぷらを揚げ始めていると、昼間私たちが使ったBBQスペースから若い男女が

二人やってきて「すみません。初心者なんで、火がつかないんです。教えてください。」

もちろん師匠が身軽に付き合います。

彼らに火をつけてやって、炭の配置なども教えてやって一旦帰ります。

「肉を一杯焼いてたな。笑うほど肉だけやったわ。」と言うと、私たちに目配せ。

おすそ分けしろと言うことですね。(笑)

少ししておすそ分け用の天ぷらを家人が持っていきます。

女の子たちの歓声が聞こえてきます。ほんとにいいとこ取りなんやから・・

 

私たちも天ぷらを楽しみ、昼間焼いておいたローストビーフを切り分け、

今日の日は、体脂肪も(師匠はご縁がありません。元祖細マッチョですから)

体重計も忘れます。

そして、待望のデザート時間。

バナナチョコ。バナナを縦割りにしてその間にチョコを挟んで焼きます。

実は私も初めて食べましたが、あまりの美味しさに、師匠の分も師匠妻の半分も

いただいてしまいました。・・・ふっふふ

そして、そのデザートを先ほどの初心者グループに届けてやると、家人はなんとなく

仄めかしていたのだそうです。

 

そして出来上がった、それを持ってもう真っ暗な道を嬉々として持っていきます。

すると突然の「きゃあ~」という嬌声。暗いキャンプ場に響きます。

たぶん隣のコテージの方は、誰かが襲われたのではないかと一瞬不安になった

のではないでしょうか。

しかし家人はスキップでもしょうかという勢いで帰ってきたかと思うと

開口一番

「お、オレ、キムタクになったかもしれん。」・・・(謎)

 

つまり、バナナチョコを持って行ったら、グループの男性たちはいなくて、

女性が三人いたそうです。

そこで「デザートなんやけど」と差し出して彼女らの目が輝き

一口食べてからのあの歓声・・・なのだそうです。

そして、彼女らがオレを見る目が「キムタク」だったと・・・アホ・・

ほんとにいくつになっても、こんな発想かと思うと・・笑えます。

 

師匠は笑っておりましたが、師匠妻は笑いながらも「それ

作ったの私なんやけど・・」とアピールも忘れていませんでした。(笑)

 

時は過ぎていきますが、焚火の焔は衰えを知らず、暗い夜の中に暖かい火の色が

ここはもちろん、周りからも洩れてきます。

そして

焔の前に陣取ると、誰からともなくいろいろなことを語り始めます。

 

と、その前に、先ほどの初心者グループがBBQを終えて、自分たちのコテージに

帰る前に、女の子の一人が走り寄ってきて

「さっきはいろいろありがとうございました。どれもすごく美味しかったです。

私たち、なんにもないんですけどこれ、気持ちばかりです。」と笑って柿の種を

差し出してきました。

「あらまぁ、お気遣いいただいて。」私はこんな心遣いをしてくれる若い人が

大好きです。こういうことを見ていると、まだまだ日本に生きていてもいいかなと

思ってしまいます。←外国人でも宇宙人でもありませんが・・

「ありがとう。おやすみなさい」と余裕の師匠。

「ありがとう。でもあれ作ったのわたし。」とあくまでもささやかなアピールは

しておく師匠妻。

「いやぁ、美味しいやろ。他人のまで食べた人もいるんやで」となぜか私を見ながら

へらへらする家人。

 

そんなこんながあっても、夜も更けた焚火タイム。

火の前に座ると、人は語りたくなるものなのですね。

今回、私はそれがよく判りました。

誰に告げるというより、それまでの自分に語り掛けているのかもしれませんが

赤い色がさまざまに変化する焔は、過去や未来や現在を自由に行き来するようです。

みんなが何十年も生きてきて、語るべき過去がなにひとつないなんてことは

ないはずです。

でも、例え親しくても、心を許せても、心の奥深くに封印している語るべきことはあります。

師匠の話を聞きながら、私も家族以外に話したことのない話をしていました。

秘密というわけではないのですが、自分の中で話したいと思ったことはないのです。

でも、焔を見ていると、そうやって人の話を聞いていると、打ち明けたいというより

自然にたまったものが溢れ出るように、言葉になっていました。

 

何十年も生きてきたからには、みなそれぞれに語るべき過去はあります。

でも、厳しかったことを、さらりと話ができるのは、いま現在はそれを受け止める人が

いるからと、焔の魔力ではないかと私は思うのです。

もしそうだとしたら、あまりやたらに違う人と焚火をするのはやめておきましょう。

誰彼かまわず、何でも話してしまいそうです。

それでなくても、口は禍という言葉が似合いの私と家人ですもの・・(笑)

 

焚火は心の箍を緩める魔法です。。。

 

すごくすごく楽しい時間でした。。。

 

 

 

 


フリーダイヤル 0120-039-242