ノマドランドがなによ。

2021年04月27日

今週水曜日までの上映というぎりぎりのタイミングで「ノマドランド」を

見てきました。日曜日の夜です。

最終もなにも、今日の上映はこの時間だけ。

しかも、観覧者は私たちを入れて三組。6人。

ソーシャルデスタンスってどこのこと? くらいのユルユル加減です。

上映前に友人に「ノマドランド」見に来たとラインいれましたら家人に

「寝ないでよ。寝たらKちゃんまた怒るよ」と親切な(?)返信が届きました。

またって・・・・

 

しかし、寝たのは・・わ・た・し・・・でした(笑)

何しろ画面が一面砂を撒いたような汚さ。かつてNHKの大河ドラマ「龍馬伝」でも

取り上げられていましたが、リアリティを感じさせる演出のひとつなのでしょう。

でも、こんな風に撮らなくても、出演者はみんなノーメーク(そりゃそうでしょ。

ノマドなんだから。これでばっちりメイクはないでしょうけれど)

場所は遠景に西部の山こそ見えますが、大部分は舗装されていない広場。

私たちが子供時代に遊んだ水たまりだらけの空き地をうーんと広くしたような広場が

殆どです。

そこにノマドたちが集まってくるのです。

初心者のための、車上生活のノウハウが先輩諸氏から教えつがれ、不用品の交換市みたいなのも

催され物々交換もしていました。

主人公は、住み慣れた家を手放し、近所の親切そうな故買屋のオジサンや

近所だった人の声を振り切り、ノマドになるのです。

 

住み慣れた家のある町は、ショッピングタウンが廃れ、もう人の住む町ではなくなったと

最初にナレーションが入りますが、そんな処はこの日本中、至る所にありますよ。

数年前に、日本の「限界集落」と呼ばれた場所が今はもうどうなっているか、

考えるだに恐ろしいです。

廃れたショッピングタウンの代わりに、Amazonの集荷場ができ、彼女は期間工のような

身分で働いています。一定期間が終われば、一旦はやめて、またしばらくして再雇用と

そんなかんじなのでしょう。

物語は淡々とすすんでいます。

好意を寄せるおじいさんとその息子夫婦にも歓待され、ここで暮らさないかと

誘われても彼女は黙って去っていきます。

 

いやいいですよ。去って行っても・・

でも、季節工としてAmazonで仕事するなら別にノマドにならなくても、

自宅から通えばいいんじゃない? と思ってしまう私には物語の必要性が

感じられないのです。

天涯孤独の夫を亡くしてなんたら・・と、執拗なナレーションは続きますが

彼女がノマドを選ぶ理由、いえ選ばなければならない理由が判らないのです。

 

今更ですが、ノマドとは遊牧民という意味なのだそうですね。

夫亡きあとの柵を断ち切って・・というならノマドになりたい日本の主婦は山ほど

いるでしょうけどね。

誰もいない一人の暮らし・・って言ってもあの広場でのコミューンには参加するんだ・・

そんな批判的な目で見ていると、ちっとも面白くない。当たり前ですけどね。

 

家人は眠りもせず見ていたようで上映後「よく寝ていたね」なんて嫌味言いましたが

「どこがよかった?」と聞くと

「うん。ああいう映画案外好きだよ。あんな生き方もあるなって。」

「あんな生き方ってどんな?」

「だ、たからあんな・・よ。」

「あれなら別にノマドにならなくったって、自宅からAmazonに通えばいいんじゃない?

仕事のない時期はないように暮らせばいいんじゃない?」

「そ、そうだけど・・」

 

「それ、テレビの映画評論の受け売りでしょ。」

 

家人は黙っています。私に何を行っても無駄と思い知ったのか、

それもそうだと思い至ったのか、たぶん前者だとは思います。

 

そのノマドランドがアカデミー賞を受賞しました。

いかにも、アカデミー賞の好きそうな映画だなとは思います。

なんやら、深そうなメッセージ性を含んだような映画・・見るからに

アカデミー賞狙いかなんて・・・ね。

中国人女性監督も立派です。

 

でも、映画はやっぱりエンタメでしょ。

エンタメがあってこその映画でしょ。その中で自分の生きる方向が見たり

感じたりするならば、それはそれでよし。

小難し思想や生き方は、別の媒体で知らせてほしいと私は思います。

そういう意味では去年のアカデミー賞は慧眼でしたね。

「パラサイト」

 

今や中国にもアメリカにも見下され、あわや日本にさえも蹴落とされそうな韓国ですが

映画はやっぱり一流です。

あのくどいほどのエンタメの中に、映画の本来の楽しみとときめきがあるのだと

私は思っています。

 

・・・そう、映画隆盛最終世代の私には、こんな映画は似合わないのです。

映画はあくまで楽しんでみたい。もう少し観客がいて、ポップコーンの匂いが立ち込めて

コーラの瓶がホルダーに並んでいる映画館で観たい。。。

 

 

 

 

 


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