もう一度

2021年11月19日

昨日は一人の夜だったので、BSをザッピングしているとありました。

日本映画チャンネルに・・・「八甲田」・・・

私はいつもこれを原作タイトル通り「八甲田山死の彷徨」と呼んでいる

のですが、家人に言わせれば私はこれが放映されていると必ず見ているのだ

そうです。

確かに、そう言われればもう10回とは言わず見ていると思います。

でも、今夜は4Kリマスター版ですから、あの所々に挿入される八甲田の四季の

美しいことと言ったら、うっとりしてその現実の白い地獄との乖離の大きさに

愕然としてしまいます。

 

当時の東映オールキャストですから、当然主役は高倉健さんに決まっていますよね。

名の知れた男性俳優は殆ど出ていますが、放映の前に亡くなられた方に哀悼をと

テロップが出てきますが、その重要人物の多くがもう鬼籍に入られているというのが

寂しいです。時間の残酷をひしと感じてしまいます。

 

映画が出来た時はすでに新田次郎氏の原作を読んでいましたから、ストーリーは

もう判っています。これをどう料理するのかなと、いつものシニカルおババ(当時は

ギャルとはいえませんが、今よりは相当若かったです。でも性格は今と一緒です)

は、斜に構えて鑑賞していました。

そして驚嘆と感動しました。原作を知っていると多くは映画化されてがっかり・・

なのですが、しかも大作と言われるほど駄作。

ところがこの映画、今のようにCGなどで誤魔化していませんから、出演者たちは

みんな極寒の八甲田で重い雪にまみれて命がけの演技です。

高倉健さんも北大路欣也さんも加山雄三さんもみんな血の気を失った顔とまつげに

氷柱をぶら下げて、体中に薄氷を貼り付けてのリアルさ。

これだけで感動ものです。

その上に映像の達人木村大作氏のカメラワークのすばらしさ。

八甲田の四季と青森と弘前のそれぞれ風物詩を主人公の少年時代を

織り交ぜての回想。

原作は出発までの準備や、身内との邂逅などいろいろ盛りだくさんなのですが

そこは省略気味でも、本編である雪山の壮絶なこと。

 

私は後年この地がどうして踏みたくて、東北旅行の時に行ってきました。

いやいや冬の八甲田ではありません。GWの八甲田に。

酸ヶ湯も田代にも行きました。そしてその時期でも、両側に高い雪壁があって

しかもその先は積雪で行き止まりとなっているのです。

5月のことですよ。改めて一月の八甲田は白い地獄じゃと呟いた加藤嘉さんのセリフが

蘇ります。

その前に青森市内からすこし外れにある「雪中行軍記念館」に行きついた時は驚き

ましたね。あんな大きな事故の記念館なのに、普通の板塀の長屋の仕切りを

切ったような粗末な板屋で、吹き抜けの部屋にぱらぱらと置かれた

当時の衣服や写真も、置いてそのままという風情でした。

まるで、当時の人たちの所業が「恥」であるかのようなこの展示に唖然としたものでした。

記念館の表札も墨字が消えかけて、廃屋手前という有様。

この地の人たちとは言いませんが、この地の為政者たちは少なくともこの殉難者に

敬意や哀悼は持っていないのだなということはよく判りました。

もっとも、それはもうすでに生き残った堀田大尉や徳島大尉が日露戦争で亡くなり

残りの下士官たちもその後の闘いで亡くなったことを思えば、それは当たり前の

仕打ちだったのかもしれませんが。

 

あれから何十年もたっていますから、今は新しくなっているかもしれませんが、

もしそのままだったら、悲しいです。

あの物語は、雪中行軍の悲惨さはもちろんですが、当時の日本人の気質。軍隊の本質

自然の美と脅威をとても判りやすく知らしめている作品と私は思っています。

そして、もう一度、やっぱりあの記念館に行ってみたいです。

ネットではなく、現実に行ってみたいです。

昨日、また映画を見てそんな気持ちになりました。

 

「でも、この映画、冬は見たくないよね」と昨日、私が映画を見た話をすると

家人は言います。私もスキー場では見たくないないです。

でも、夏の暑い日には似合わない映画です。。。

 


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